研究期間:1995年4月〜1996年3月 |
性ステロイドの中枢作用についての神経内分泌学を中心に(1) 電気生理学, (2) 形 態学, (3) 行動学, (4) 分子生物学などの手法を用いて研究を進めている. 電気生理学では昨年から開始した無麻酔無拘束動物の自由行動下における内側視索前野 ニューロンの記録が軌道にのり, 雌ラット性行動の動機付けに関連する中枢活動の記録が行えるようになったのに加え, 下垂体細胞からのパッチクランプ記録が日常的に行われている. 免疫組織化学とin situ hybridizationを主な手技とする形態学グループはGnRHニューロンの個体発生におよぼす環境因子の影響をラットと硬骨魚で明らかにした. また, c-Fosタンパクの染色により雄ラットの性行動に関係する前脳部位の同定を試みている. 実験的脳梗塞による細胞脱落と学習機能の低下に対してエストロゲンが及ぼす効果を形態学的, 行動学的に評価し, 一定の改善が得られることを確認した. 性行動の調節機構では, 雌では腹側前乳頭体核の役割に注目し, 雄では非接触性勃起の調節回路の同定に取り組んでいる. 分子生物学的技術により, 従来から当教室の主要な研究課題の一つであったヒトグロビン遺伝子発現の制御機構と類似の調節がエストロゲン受容体遺伝子の調節にも存在することを示す所見を得ている. 今後, Differential Cloning法なども導入し, エストロゲンによるゲノムDNAの修飾の可能性を調べたい. また, 分子生物学, 行動学, 電気生理学の組み合わせにより, 膜レベルでのエストロゲン作用機構についての研究がスタートすることになっている.