研究期間:1998年4月〜1999年3月 |
少なからぬ難治の精神神経疾患の発症が思春期や更年期といった性ホルモン分泌の激変期と一致したり性差を伴う。また、過剰な男性ホルモンが粗暴な犯罪を起こさせるように、ヒトの行動も性ホルモンの支配下にある。思春期の発動機序、情動行動の調節、ひいては精神神経難病の理解といった課題の解決を目標として、ラットの性行動をモデルに脳に対する性ホルモンや視床下部ペプチドの作用を研究している。現在、(1) 脳の形態形成における性ホルモンの役割について免疫組織化学やin situ hybridization を用いて動的な形態学的研究をしている個体発生グループ;(2)神経細胞の生存や死滅、脳内神経回路の形成に関わるエストロゲン受容体の発現制御を調べる分子生物学グループ;(3)視床下部ニューロン間、あるいはニューロンとグリア細胞間の相互作用や、細胞内情報伝達系に注目している細胞生理グループ;(4)性衝動など情動行動の中枢機序を電気生理学・行動生理学的手法で研究している行動実験グループが活動している。このような神経内分泌学的な課題に当講座が研究の力点を置くようになって丸5年が経過し、本年は始めて2名の学位取得者を送り出す記念すべき年となった。その意味で当講座の研究活動はようやく軌道にのったと思われる。下記のリストにも見られるように、本年度も学内外との共同研究が盛んに行われた。